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豊かな森とツキノワグマと私たち

豊かな森とツキノワグマと私たち

日本では古来より人とクマは共存し生活していました。
その昔、森が豊かだった頃、クマと人とが住む環境には隔たりがあり、お互いに被害を及ぼすことはあまりありませんでした。しかしながら、自然が失われつつある今日、多くのクマが人間の手によって殺されたり、繁殖できなくなってその個体数を減らしたりしています。

なぜそのようなことが起きてしまったのでしょうか。
本号では、絶滅の危機にある四国のツキノワグマについて、WWFジャパンにお話をうかがいました。森とクマと私たち人間のかかわりについて、一緒に考えてみませんか。

日本に生息しているクマはヒグマとツキノワグマの2種類です。ヒグマは北海道に生息し、ツキノワグマは本州と四国の一部に生息しています。
ツキノワグマはヒグマより小ぶりで体長約1.5メートル、体重40~130kgほどです。平均体重はオスで70kg、メスで60kgといわれているので、体重的にはヒトの成人と大差ありません。



 

 

クマ科は「食肉目」に分類されていますが、日本に多く生息しているツキノワグマは植物・果実を中心に食べる雑食性動物です。季節によって旬の木の実などを食べています。


例えば、春はフキ、タケノコ、木の新芽などの山菜。夏は植物のほかに、アリやハチ、その幼虫などの昆虫類も食べます。秋にはブナ、ドングリなどの木の実などをたくさん食べて、栄養をつけ、冬ごもりに備えます。

性格は警戒心が強く、非常に臆病なので、人が驚かせたり、出会い頭に遭遇したりしなければ、クマが人を襲うことはほとんどありません。
例外的に、子連れのクマの場合は、子供を守るために攻撃的になることがありますが、普通はクマの方が先に気配を察知して、人との出会いを避けるそうです。

ツキノワグマの生息数は環境省から発表されていますが、最新データとはいえず、また、全国的な個体数の調査が完全とはいえないため、ツキノワグマのおかれた状況をきちんと反映した数字ではないのが現状です。それでも、昨年は過去最高の約4300頭のクマが人の手によって駆除されたことが明らかになっています。


このままではクマが絶滅するおそれが高まる可能性があると指摘されており、全国的なクマの生息数の正確な把握や、地域毎の野生動物の管理体制の見直しが必要となってきているのです。

 

四国地方に差す一筋の希望の光

ツキノワグマの行動を追跡するツキノワグマ調査
四国自然史科学研究センターが首輪の発信機をつけたツキノワグマの行動を追跡するツキノワグマ調査

四国にはかつて、剣山、石鎚山系を中心に、ツキノワグマが広く生息していましたが、狩猟や有害駆除による無制限な捕獲、人工林の拡大による生息環境(ブナ林など)の減少により、その生息数が激減してしまいました。現在は東部の剣山山系にわずか10数頭から数10頭が生き残っていると推定されています。

絶滅を回避するためには、剣山などの高地に残るブナ林のような、クマにとっての良好な生息地を確保し、その周辺でも生息環境の改善を図ることが必要です。また、長期的にクマを保護管理する施策や、クマによる人身被害や林業被害を防止する対応策の検討がなされています。

調査のためツキノワグマを捕獲するドラム缶を使った罠
調査のためツキノワグマを捕獲するドラム缶を使った罠

麻酔で眠っているツキノワグマ
麻酔で眠っているツキノワグマ。体の大きさや健康状態などを調べ、発信機をつけて放す


現在、NPO法人四国自然史科学研究センターは、WWFジャパンの支援を受けて、高知県と共に、クマの行動エリアを特定するデータを収集や、自動カメラを用いた調査を行っています。

 

2002年より調査を始め、捕獲したクマに発信機をつけて森へ放し、本格的な追跡調査を開始しました。
その結果、行動範囲が判明し、さらに、越冬穴から聞こえる子グマの鳴き声も確認されました。

その後も、2006年8月には独り立ちしたばかりの若グマが、今年4月に冬眠から目覚め活動している事実がニュースとなりました。
若いクマが無事に成長し、世代交代の一員として定着した証拠と言えるのです。

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