Polarbear ホッキョクグマの危機 -環境汚染-
一日中太陽の沈まない白夜と、一日中太陽の昇らない極夜に広がる美しい氷の世界、北極。その自然は生き物にとって厳しく冷たい場所でありながら、そんな過酷な条件に適用し逞しく生息している動物たちがいます。中でも白く美しい姿のホッキョクグマは哺乳類の中で一番大きく、北極圏の食物連鎖の頂点に属しています。
前回のEcolocoでは、地球温暖化現象におけるホッキョクグマの危機について特集いたしました。実はホッキョクグマの生存を脅かす深刻な問題が、更にもう1つ彼らの目の前に迫ってきています。それは近年、北極圏で深刻な被害が明らかになり始めた「環境汚染」なのです。

人が住みにくい北極圏なのに、環境汚染とはとても考えにくいですが、残念ながらホッキョクグマが高濃度の環境汚染物質に晒されていることが近年の調査で明らかになってきました。
私たちは2006年夏号の特集「海洋汚染とイルカの危機」で、WWFジャパンの協力を得て、海洋汚染の深刻化についてご紹介させていただきました。現在、私たち人間が世界各地で生産・利用してきた沢山の化学物質が、環境汚染として地球に広がり、様々な動物に影響を与えています。世界各地で発生するダイオキシン類や農薬などの「残留性有機汚染物質(POPs)」と呼ばれる有害な化学物質が、はるか遠くの発生源から北極圏へと集まってきているのです。

遠い熱帯地域で散布された農薬の大部分は土壌に留まることなく大気中に拡散し、気流に乗って北極圏に運ばれてきます。先進国の大都市や工場周辺から流れ込んだ河川の水が、海流と共に流されてきます。結果として、北極や南極といった極地は、汚染濃度が発生地域よりも高くなる場合が少なくありません。

有害科学物質が本当に怖い理由は、有害性、難分解性、生物濃縮性、長距離移動性の4つの性質を1つの物質が同時に兼ね備えることで、生き物に対する危険性が飛躍的に高まることです。海水に溶け込んだ有害化学物質は、まず植物プランクトンの体内に入り、次に動物プランクトンへ、そしてそれを食べる小魚へと少しずつ濃縮されながら、内臓や脂肪へ蓄積されて受け渡されてゆきます。海水中にわずかな濃度で拡散していた有害化学物質は、食物連鎖を通じて徐々に生体濃縮を起こし、最終的に、ホッキョクグマなど生態系の上位にいる動物が、高濃度の有害化学物質に晒されていくのです。
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WWFの調査によると、スバールバル諸島のホッキョクグマは、体内での抗体生成を阻害されて病気への抵抗力が弱まってきていることが判明しました。1991年から1994年の調査結果で、伝染性の病気に効果を発揮する免疫値が著しく低下していることが分かったのです。これは有害化学物質に汚染された母乳を通して母グマから有害化学物質を受け取った、抵抗力の弱い仔グマの免疫をさらに低下させ、死亡率を増加させることにも繋がりかねません。
また、スバールバル諸島で調査したメスのホッキョクグマのうち約1.5%に生殖器の奇形が確認されました。これも、有害化学物質によるホルモンのかく乱が原因だと見られています。
この他にも、北極圏ではアザラシやホッキョクグマから高レベルの水銀やカドミウムなどが検出されているほか、核実験や原子力発電所の事故、核再処理施設からの放射能漏れが原因で、放射能レベルが上昇していることも大きな問題となっています。
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